鍼灸コラム

鍼灸について

どこまで刺す?鍼灸治療で気になる針の深さとは?

2018.11.7

鍼灸治療について知っている人なら疑問に思ってもおかしくはないのが、刺すときの針の深さではないでしょうか?どれくらい深く刺しているものなのかという単純な興味はもちろんあるでしょう。それだけではなく、大体でも針の深さの基準について知っておけば、治療が安心できるものかどうか判別しやすいものですよね。そこで、実際は浅く刺すのか深く刺すのか、そしてどれくらい刺すものなのかといった、鍼灸治療の際の針の深さに関する知識をまとめました。

☆針を刺す深さはどれくらい?

実際のところ、針を刺すときは深いほうと浅いほうのどちらがいいものなのか疑問に思ったことはありませんか?そこで、効果があると思うのはどちらなのかについて知るため、アンケート調査を行ってみました。

 

【質問】
鍼灸治療で針を刺すなら深いほうが効果があると思いますか?

 

【回答結果】
思わない : 80
思う : 20

調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年09月13日~2017年09月20日
有効回答数:100サンプル

★8割は深ければ効果があるわけではないと回答!

アンケートの結果、なんと全体の8割は深いほうが効果はあると思うかという質問に対し、「思わない」と答えていました。

・鍼の効果は深さではなく、刺す場所だと思う。(50代/女性/専業主婦(主夫))
・そんな単純なものではないですね。刺す場所によって強弱や深さが違います。(30代/男性/正社員)
・深いと痛みのほうが強いです。(30代/男性/正社員)

多くの人が肝心なのは深さよりも刺す場所だと感じているようです。深く刺しさえすれば効き目があるとは思っていないことがうかがえます。逆に、深いと痛みを感じてしまうことを心配している声もありました。

・患部の中心に届いて効き目があると思うから。(60代/女性/専業主婦(主夫))
・普段刺激できない部分に届く必要があると思う(40代/男性/正社員)
・普通に考えても浅いと表面だけにしか刺してない感じしかしないですからね。やはり深い方が筋肉などを刺激して効果があると思いますね。(40代/男性/正社員)

反対意見は、逆に深いほうがツボや筋肉を刺激して効き目がありそうだというイメージが強いことがわかります。表面だけにしか刺していないような浅さだと効果がないものだと思っているのかもしれません。

調査してみたところ、圧倒的多数が深いからといって効果があるとは思わないと答えていたことがはっきりとしました。では、どれくらいの深さだと鍼灸治療としての効果をきちんと発揮してくれるのかを見ていきましょう。

 

☆針の長さを残して浅く刺す理由とは?

鍼灸治療用の針はさまざまなサイズがあるので長さもまちまちですが、一般的なサイズは「寸6・3番」という針です。この針は約4.8cmの長さがありますが、実際に刺すときの深さはこの半分もありません。施術する人によって深く刺す人もいないわけではありませんが、あまり一般的ではないことは覚えておくといいでしょう。
深く刺してしまうと、身体を動かしてしまった際に折れたり曲がったりしてしまう危険性があります。治療中は大して身体を動かさないから大丈夫なのではないかと思うかもしれませんが、生理現象であるくしゃみや咳による影響で折れてしまうこともあるので注意しなければなりません。たとえば、2cmの針を1.5cmまで刺して万が一折れてしまうと、深く刺した分だけ容易に抜けなくなってしまいます。下手をすれば、そのまま体内に針が残ったままになってしまうので要注意です。もちろん、針も金属疲労を起こしていたり、使い捨てのものを繰り返して使っていたりしなければ、簡単に折れてしまうことはありません。ただ、安全を考えるなら深く刺さないほうがいいでしょう。
また、効果の面でも深く刺せばいいというものではないと言えます。酷い筋肉のコリである筋硬結(きんこうけつ)と呼ばれる部分を刺激する際、そこに直接針を突き刺すよりも筋硬結で止めたほうが効果はあるとされているのです。

 

☆危険!深く刺してはいけない部位と理由

折れるリスクや効果の面だけではなく、ほかにも絶対に針を深く刺してはいけないケースがあります。まず、背中や鎖骨などは針を深くまで刺してはいけない部位です。なぜかというと、これらの部位は肺までの距離がほかよりも短いため、針を深く刺してしまうことで肺に穴が開く、つまり「気胸」を引き起こす危険性があります。気胸は息苦しさを感じるだけではなく、呼吸困難や胸痛が起こる症状です。これにより、心臓を圧迫して血圧の低下を引き起こすこともありますし、最悪の場合は死に至ります。肺の周囲だけではなく、腰の上部も針を深く刺してはいけない部分です。背骨を挟んで両側に腎臓があるので、深く刺すと腎臓まで突き刺してしまう可能性があります。背中の皮膚から腎臓までの距離はわずか2cm~3cm程度しかありませんから、少し深く刺してみただけでも届いてしまう可能性のある深さです。
このように、場所によっては深く刺すと非常に危険であるため、十分に注意しなければなりません。いずれもうつ伏せで鍼灸師に任せる形になりますから、これらの部位の治療を安全に行えるか、きちんと確認したうえで施術するのが望ましいでしょう。

 

☆部位別に紹介!針を刺す深さの目安

鍼灸治療で針を刺す際の具体的な深さがどれくらいなのかは部位によって大きく異なります。治療箇所毎に深さは決まっていますから、大体どれくらいのなのかを覚えておくといいでしょう。
まず、慎重に施術をしてもらわなければならない鎖骨の下はわずか1mm~3mm程度が目安です。胸や背中も同様で、それくらいの深さだけにしか刺すことはできません。先述した通り、肺の周りは深く刺してしまうと気胸を引き起こすおそれがあるので、ほかの部位よりもかなり浅くなければ刺せなくなっています。逆に、臀部や腰の部分は内臓を傷つける心配がないため、最高で2cm程度まで刺すことが可能です。首や手足、肩は同様に内臓が近くにありませんが、こちらは骨がありますから、2mm~1cm程度が一般的な深さになります。
筋肉のコリ具合や鍼灸院の方針によって刺す深さは変わるため、必ずしもこれらの目安に該当するわけではない点に注意しておきましょう。ただ、浅いよりは深いほうが内臓を刺してしまうかもしれないリスクが伴うのは確かです。鍼灸師は、何よりも安全面の確保ができるかどうかを基準にして施術するのが無難だと言えます。

 

☆まとめ

鍼灸師が万が一にでも針の深さを間違えて刺してしまうと、思わぬ医療事故に繋がる可能性があります。深く刺してしまうと針が折れる可能性が高まりますし、何よりも間違えて肺を刺してしまったときには患者の命が危険にさらされてしまいます。これから鍼灸師を目指すのなら、適切な針の深さは必須の知識ですから、部位毎の深さの目安は必ず覚えておくようにしましょう。もちろん、最大限の効果を発揮させるのが鍼灸師の大切な仕事ではありますが、それよりも患者の安全確保を第一に考えることを忘れないようにしてください。
関連記事:「鍼灸治療には必要不可欠!施術に役立つ針の知識を徹底紹介!」

鍼灸・あんまの学校 針灸教育の名門 東洋鍼灸専門学校についてはこちら

 

  • 参考になった (6)
 
鍼灸師は患者さんの体表に触れたとき、たくさんの情報を指先から感じとります。
硬さ、ざらつき、へこみやふくらみなどを参考に、深い場所にかくれる『コリ』をみつけるのです。
そして適確な箇所、角度、深度で針を刺し入れることで、コリの解消につなげます。
もちろん、安全な深さでなくてはいけません。
正確に針を刺入するためにも、日々の練習による努力を重ね続けています。

東洋鍼灸専門学校 2学年主任 

瀧口 定広(たきぐち さだひろ)

役に立ったらシェアお願いします!
だから安心鍼灸師

この記事が気に入ったら
いいね!しよう