東洋医学について |鍼灸・あんまの学校 針灸教育の名門 東洋鍼灸専門学校

東洋医学について

東洋医学の歴史

東洋の伝統医学を大きく分類すると、ユナニ医学(イスラム医学)、アーユルヴェーダ(インド)、そして中国に起源を持ち東アジアに広まった中国医学があります。
今から2000年ほど前に中国医学の基礎が定まりました。その当時に書かれた医学書が古典と称され、鍼灸では『素問』『霊枢』『難経』、湯液(漢方薬を使う医術)では『傷寒論』『金匱要略』などで、今でも熱心に読み継がれています。

当校創立者の柳谷素霊は、これらの古典を読むことを重要とし、「古典に還れ」と唱導しました。当校では師の素志を受け継ぎ、古典読解のための授業を設け課外でも積極的に勉強会が催されています。
東洋医学の歴史

鍼灸医学の治療法

江戸期の灸治療の風景 (内藤記念くすり博物館所蔵)
江戸期の灸治療の風景 (内藤記念くすり博物館所蔵)
中国医学は、鍼灸、湯液、養生の三部門から成っています。日本の制度では、湯液は別の資格(医師・薬剤師)が必要ですので、鍼灸師は処方ができませんが、中国医学の真髄を見極めるためには、不可欠な知識です。また、貝原益軒の『養生訓』で有名ですが、養生は病気予防、病気治療には欠かせません。

当校では、幅広い知識を有する臨床家を育成するために、養生だけではなく、湯液の授業を設けています。これによって、適応能力の広い鍼灸師が育っています。

中国医学が、最初に日本にもたらされたのは奈良・平安時代です。当時の中国は灸療法が盛んに行われていましたので、それが伝わりました。日本では灸療法は今でも行われていますが、日本人の体質に合っていたためだと思われます。意外にも、現在の中国では灸療法はほとんど行われていません。このように、灸療法は唯一日本に残された治療法といえるでしょう。

当校では、現代人に合わせた方法と、伝統的な方法を教授しています。
室町時代になると、中国から医師を招いたり、留学したりして、積極的な学術交流がなされました。この当時の中国は、灸に代わって鍼が主流になっていましたので、わが国には鍼療法が普及しました。灸療法は廃れることなく、依然として盛んに行われました。おそらく、このころもたらされたのが「九鍼」、つまり多くの種類の鍼の使い方を学んだものと思われます。

日本で通常用いられているのは「毫鍼」という繊細な鍼ですが、九鍼に含まれる鍼は、刺さない鍼、太い鍼、長い鍼、切開する鍼など、多岐にわたっています。これらを修得するには一定の時間を要しますので、当校ではもっぱら鍼灸科でこれを教授しています。
九鍼
九鍼
打鍼のための腹診図(左)/打鍼(右)
打鍼のための腹診図(左)/打鍼(右)
江戸の初めに鎖国が行われ、中国との交流も途絶えてしまいました。「学ぶ」時代から、自分たちで「創り上げる」時代になり、今までに学んだ灸療法、鍼療法を下地に、日本人の体質に合った新しい鍼灸医学が創り出されました。この時代に日本人の体質にあわせた細い毫鍼が開発され、それを刺し易くするための鍼管も発明されました。また、打鍼という日本独特の鍼法も編み出されました。

当校では、銀製の豪鍼を用い、昔ながらの訓練法で技術向上を図っています。また、鍼灸科では打鍼法も教授しています。

鍼灸医学の診察法

中国医学には伝統的に「四診」と称する診察法があります。

望診(神技)

望とは、見るという意味。顔色、目の光、姿勢、動作などを観察し、神気(生命エネルギー)の有無を伺い、病人の予後を判定します。例えば、顔色の病的な白さは、五臓においては、肺とのかかわりとして捉えます。

聞診(聖技)

聞とは、耳で聞くという意味と、においをかぐという意味があります。病人の発する声や、音を聞いたり、体臭などの情報を集めます。例えば、焦げくさい臭いは、五臓においては、心とのかかわりとして捉えます。

問診(工技)

問とは、問いかけと答えによる診察法。伝統的な古典鍼灸においては、病気を、心身全体のバランスの乱れによるものと考えます。最もつらい症状についてのみならず、食べ物の好みや、睡眠の状態、ストレスの有無や、職業とのかかわりまで、幅広い情報を集めます。例えば、酸っぱい味の好みは、五臓においては、肝とのかかわりとして捉えます。

切診(巧技)

切とは、おさえるという意味。脈診や腹診と呼ばれる診察法にあたります。とりわけ脈診は、伝統的な古典鍼灸において最も重要とされている診察法で、手首の寸口部といわれる部位で脈を触れることにより、様々な情報を集めます。また、経絡の反応を手指でとらえる「切診」という診察法もこれに含まれます。「腹診」と「切経」はわが国のみで行われている伝統的な診察法です。

当校では、これらの診察法の中で「脈診」「腹診」「切診」を重視しています。熟練と洗練された感覚を必要とする大変難しい診察法ですので、日本でこれらを教える学校は限られています。当校では臨床のベテランの講師陣が、理論から実践までを丁寧に指導いたします。鍼灸科では、特に「切経」に力をいれています。これらの診察法に習熟することが、ハイレベルの鍼灸師になる近道でもあります。
現代の脈診

現代の脈診

明治初期と思われる脈診の写真 (長崎大学附属図書館所蔵)

明治初期と思われる脈診の写真 (長崎大学附属図書館所蔵)

鍼とは

鍼は灸と合わせて鍼灸と呼ばれています。世界の伝統医療の中で最も長い歴史を持ち、いまや地球規模に広がる代替医療の代表です。

鍼の起源はヘン石だとされています。毒虫に刺されたり、傷が化膿した場合に人々は鋭利な石片で患部を刺して血を出し治療していたようです。その後、数々の経験から穴や経脈が発見され、また金属の鍼が発明されるようになって、それらの穴(ツボ)や経脈に作用させ、治療を行うようになりました。
中国医学の重要な古典である『霊枢』には、基本となる九種類の鍼(九鍼)が記載され、現在私たちが一般に使用する鍼はこのうちのひとつ、毫鍼といわれるものです。中国古代の貴族の墓からは、金の毫鍼が見つかっています。日本の鍼術の特徴の一つは、細い毫鍼を使い、痛みなく刺入することです。

鍼とは
日本で使われている鍼は、日本人の身体に合わせてあり、中国のものと比べると細くてやさしい刺激のものが主流です。その繊細な鍼で、あらゆる症状に対応するには、その鍼で繊細な手技を施し、生体反応を制御していかなくてはなりません。 そのために当校では、硬く詰めた米糠、所謂「ぬか枕」への刺鍼練習や水に浮かんだリンゴに鍼を刺入する「浮き物通し」これは、体構えがしっかりと定まらないとリンゴがクルクル回ってしまいなかなか刺入できません。また、薄い桐板に鍼を通す「堅物通し」等、古くからの練習方法を行っています。また、鍼先の研ぎ 方ひとつで刺入するときの状態が違うのです。ですから、鍼の研ぎ方の練習もあります。 授業では、柔らかく操作が難しい銀製の鍼で基本練習を行い、人体への刺入訓練にもディスポの銀鍼を使用しています。近年は人肌に似せたシリコン性の刺鍼練習機を導入し、従来の練習方法に文明の利器をも取り入れ古典伝統鍼灸を守り続けています。

灸とは

灸の起源については大変古く、すでに中国の春秋戦国時代の文献に記述が見られます。鍼よりも灸が先に治療法として体系化されたとも考えられています。

灸はヨモギを乾燥させた葉をつきつぶして得られたモグサというものをひねり、穴(ツボ)の上などで燃やすものです。戦前は、日本の多くの家庭にモグサが常備され、足腰が痛い、おなかをこわしたなどのときに、灸をすえていました。肺結核を灸で治したという報告も多くあります。

灸には、皮膚に直接モグサをすえるものから、ニンニクやショウガの切片に載せてすえるものまで、多くの種類があります。現在の中国では直接灸はすたれ、棒灸による温法が主体ですが、直接灸の伝統は日本に残り、八分灸、糸状灸など独特の発展をしています。

灸とは
灸はひどく熱いという印象を一般に与えがちですが、病人の方にとっては気持ちの良いものです。稀に病気に よっては熱くすえることもありますが、灸は元来気持ち良くすえるもので、熱くすえるものではありません。しかしそのような灸をすえるためにはしっかりとした技術が必要になります。
当校ではまず、指でひねって使用する散モグサを使って米粒大、半米粒大、糸状大(米粒大の約1/8)の円すい形のガイシュ(モグサをひねったもの)をひねる練習を行います。米粒大で1分間に60個を標準とします。それから半分に割った竹の上で手際よく、素早くガイシュに点火できるように何度も繰り返し練習し、1分間に40個を目指します。
その後人体への施灸と順を追って練習し、3年間で一般的な灸法から特殊灸法(棒灸、隔物灸、知熱灸など)までを学んでいきます。このようにして日本で発展してきたとされる灸術を身につけ、指先の加減でいろいろな病気に対応することができるように日々鍛錬するのです。

あん摩(あんま)マッサージ指圧とは

あん摩(あんま)もマッサージも指圧も全て手指を使い治療するという点ではなんら違いはありません。しかし、あん摩(あんま)は中国に起こりその後日本に渡来してきたもので、東洋医学の考えに基づき、穴(ツボ)や経脈を用いて薄い衣服の上から施術し、身体の中心部から末梢の方向へ刺激を与えます。

マッサージはヨーロッパに起こり、その後、明治になって日本に伝えられたもので、穴や経脈などを対象とはせず、血液やリンパなどの循環系を基本に考えながら皮膚に直接、またはオイルなどの滑剤を用いて施術し、あん摩(あんま)とは逆に末梢から中心へ向かって刺激を与えます。

指圧は、古法あん摩(あんま)や導引・柔道活法から発し、大正初期に米国の各種整体療法の学理と手技を吸収したもので、主に衣服の上から一点圧の刺激を遠心性に与えます。

あん摩(あんま)マッサージ指圧とは
生きた人の体に触れることは、鍼灸を勉強する上で大変重要であり、欠かすことができません。当校ではこのような理由から、手技にも力を入れており、なかでも鍼灸と関わりの深い、「すじ揉み」と呼ばれるあん摩(あんま)を重視し、授業を行っています。 今日では、手技は多種多様な方法で行われていますが、前述したように昔は、あん摩(あんま)と称して、東洋医学の一分野として穴や経脈を主体にしながら施術を行っていました。「すじ揉み」はこのような考えに基づき、日本で長年受け継がれてきた揉み方の一つです。 生きた人の体を通して、穴や経脈を学ぶのは当然のこと。ただし、そのためには漫然と体に触れるのではなく、系統だった方法があり、それがこの「すじ揉み」と呼ばれるあん摩(あんま)です。 東洋医学である鍼灸を実践する臨床家になってほしい、その目的のために当校は手技にもこだわりをもって実践しています。